大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)118号 決定

抗告人等十五名代理人は「原決定を取消す。本件を大阪地方裁判所に移送する。」旨の裁判を求め、その理由として左記のように主張した。

原決定は商法第五一六条第三項の規定を看過し、かつ民事訴訟法第二一条の規定を適用せられることによつて著しい損害を被る多数の被告の損害を避くることについて全然考慮を払わない失当なものであり、抗告人がその点種々主張した(昭和二十七年二月十三日附管轄違の抗弁並に移送の申立、同年二月二十六日附準備書面、同年四月二十四日附「第二準備書面、及び同年六月十一日附訴訟移送の申立参照」)のに、之を全く無視してなした違法なものである。よつて、原決定の取消を求めるため本件抗告に及んだのである。

本件記録に綴ぢられている昭和二十八年三月六日東京法務局日本橋出張所法務事務官の作成にかかる相手方の登記簿謄本(三七九丁以下)によれば、本件訴訟の提起せられた昭和二十六年十二月四日には既に相手方の大阪支局は廃止され、その旨の登記手続をも了されていることを認めることができる。相手方主張の相手方と抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合との取引が、相手方の大阪支局においてなされた取引であり、その義務履行地が大阪市であつたとしても、右のように相手方の支局が廃止された場合においては、外に大阪支局の事務を承継する支局があれば格別、それを認め得ない本件の場合には、その債務の履行地は当然に相手方の主たる事務所の所在地である東京都中央区に変更せられたものと解するのが、商法第五一六条、民法第四八四条、第四八五条の精神よりしても相当であるから、本訴管轄裁判所は、いずれの点からしても、抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合に関する限り、東京地方裁判所であるといわなければならない。

民事訴訟法第二一条の規定は、いわゆる主観的訴の併合の場合には、常に適用ありと解すべきではなく、訴訟の目的である債務が同種であるか、或は内容上又は発生原因において何等かの関連ある場合に限定して適用するべきであると解するのを相当とする(昭和九年八月二十二日大審院判決参照)。

右のように制限して解さないと、本来管轄権を有しない被告の権利が不当に侵害せられることになるからである。本件の場合について考えてみると、抗告人小谷権六に対する請求は、抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合に対する本件訴訟の目的である債務についての保証債務の請求であるから、関連ありと解するのが相当であり、従つて小谷権六に対する本訴は又東京地方裁判所の管轄に属すると解すべきであり、又右抗告人両名に対する関係で抗告人両名が大阪市に住所を有していることによる不便は考えられるも、それ以外の事由についてはなんの疏明もないから、それだけでは未だ民事訴訟法第三一条により移送すべき事由が存するとは認められない。しかしながら、その他の抗告人等十三名に対する本訴の請求はいずれも、相手方が抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合に対する本件訴訟の目的となつている債権に基いて、同抗告人のその他の抗告人等十三名(抗告人小谷権六を除く)に対する取引代金の請求なのである。故に右抗告人等十三名に対する訴訟の管轄は、抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合と右抗告人等十二名との取引の債権を標準として定むべきで、相手の抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合に対する債権を標準として定むべきでないことはもちろんである。抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合の右抗告人等十三名に対する取引の債権と相手方の大阪水産煉製品商工業協同組合に対する債権とは、その間に同種又は何等かの関連があるとは認められないから、右披告人等十三名に対する本訴は、民事訴訟法第二一条は適用すべき余地がないものといわなければならない。右十三名に対する本件訴訟が東京地方裁判所に管轄権が存することについては、外に認める根拠はなにもみあたらない。

故に本件抗告は抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合と抗告人小谷権六に対する関係では理由がないから棄却すべきであるが、その余の抗告人等十三名に対する関係では理由があるから、右抗告人十三名の移送の申立を却下した原決定をその部分に限り取消す。しかして右抗告人十三名に関する請求の管轄裁判所については、抗告人大阪水産煉製品商工業協同組合と右抗告人等十三名の住所地のいづれによるべきかについては、未だ資料が十分でないから原決定を取消すに止めて、主文のように決定する。

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